もしも、あのとき場面緘黙(ばめんかんもく)という病気を少しでも知っていれば――
あなたは場面緘黙(ばめんかんもく)という病気を知っていますか?
場面緘黙(かんもく)とは、家などではごく普通に話すことができるのに、例えば幼稚園や保育園、学校のような「特定の状況」では、1か月以上声を出して話すことができないことが続く状態をいいます。典型的には、「家ではおしゃべりで、家族とのコミュニケーションは全く問題ないのに、家族以外や学校で全く話せないことが続く」状態です。
専門家に聞く、場面緘黙(かんもく)について知っておきたいこと:NHKハートネット 福祉情報総合サイト より引用
この病気を知って思い出した場面があります。それは・・・
中学生のとき
私は中学生の頃、吹奏楽部に入っていました。
大体、女子60人くらい男子10人くらいの規模でした。
朝練、放課後の練習は毎日びっしりと。
夏休みや冬休みもほとんど休んだ記憶がありません。
ほぼ毎日学校に行っていたと思います。
当然ストレスもたまります。
年頃の女の子が集まって集団を形成していれば、必ず陰口を叩く人がでてきますよね。雪だるま式に大きくなりケンカに発展して大事になることも。
そんなことがあると、音楽室にイスを輪に並べて話し合いをするんです。
部員全員の顔が見えるように、丸くなって輪で延々としゃべり続けます。
こんな場面を思い出した
場面緘黙を知って思い出したのは、そんな話し合いのときです。
とある女の子がいました。
フルートを吹いていた子でした。
話し合いの細かい内容は思い出せませんが、彼女の意見が必要な場面でした。
誰かがその子に話を振ったんですね。「あなたはどう思う?」と。
でも、その子が口を開くことはありませんでした。
全然喋らない
脱いだ上履きをつま先でいじりながら、今にもずり落ちそうな体制になっています。
そして、喋らない。
10秒経っても、20秒経っても、1分経っても……。
「いつもは喋るのに、なんでしゃべらないんだろ?」
私はそう思いました。おそらく周りのみんなも。
あまりにも長い間喋らないので、周りはシビれを切らして、その子を責めます。
「どうして、自分の意見を言わないんだ」
「あんたが何も言わなければ、話が進まないじゃない」
「なんでふてくされてんのよ!」
それでも、喋らない。口を開かない。
1時間くらいああだこうだと言っている内に、その子と仲がいい子の2人が隣の音楽準備室へ行き、その子の話を聞いてくることに決まりました。
『仲が良い子と2人でなら、話すことができるだろう』
そう考えたんですね。
2人が音楽準備室に入ってから15分くらいでしょうか。
でてきました。
仲がいい子が彼女の話した言葉をメモした文章を読んでいきます。
そして、最後にこう言ったのです。
ここまで自分の意見が言えなくて、喋ることができなくてごめんなさい
仲がいい子が読みあげている隣で、その子は泣いていました。
思えば、その子はたくさんの人の前でしゃべるのが苦手だったように思います。
少人数でのおしゃべりは問題なくできていたんですけれど。
授業中に指されたときなどは声が小さく、先生に聞き返されることは多かった。
そして、そんなときは決まって、ふてくされた態度を取っていました。
「その態度はなんだ!」とよく怒られてもいました。
これが、彼女の気質というか性格の問題ということで認知されていたし、それで先生たちも片付けていました。
彼女は本当は苦しんでいたのかもしれない
ですが、ふてくされた態度も実はそう見えるだけで、心の中ではいつも辛い感情を抱えていたのかもしれません。
普段はそれでもなんとかしゃべれていたけれど、音楽室での話し合いはたくさんの人の前で意見を求められて、しゃべれなくなってしまった。うわばきをつま先でいじるその態度も、イスからずりおちそうな体勢も、全部彼女なりのSOSのサインで、彼女は苦しんでいた。
でも人にはそれがふてくされているように見えるから、誤解されてしまいます。
「どうしてそんなに泣くまで自分の意見を言わなかったんだろう?喋ることなんて簡単なのに」
申し訳なさそうに泣いている彼女を見ながら、あの頃の私はそう思っていました。
場面緘黙という病気を知らなかったからです。
彼女が場面緘黙だったのか、違うのかは今では分かりません。
ですが、あのときこんな病気もあることを知っていれば、あのとき泣いている彼女に言える言葉はきっとあったはずです。
大人になった今でも彼女は悩んで、苦しんでいるのでしょうか。
話したいけど、話すことができないこと。
考えてみてください。
◆ ◆ ◆
<問題・なぜこんなに少ない?>
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